アラサーOLの備忘録

東京に暮らすアラサーOLです

「怖い絵」

 

怖い絵 (角川文庫)

怖い絵 (角川文庫)

 

ヨーロッパの絵画を理解するにはキリスト教=聖書を勉強しないといけない、と思い込んでいたわたしにとって救世主のような本。有名な作品ではなく、「怖い」という感情で絵を選んでいるのが面白い。中野京子さんと編集者はすごい企画力の持ち主。「怖い絵」というタイトルだけで「いける!」と思っただろうな。

 

まず、表紙の絵の女の目つきが怖い。隣の女をジッと見つめる目は何かを語っているような、そうでないような・・・という疑問を解消してくれるのがこの本です。中野さんの文章は雑誌や新聞でたくさん目にするけれど、本当に研究者なのかと思うくらい文章が巧み。小説家みたい。自分の読みにくい文章を何とも思わないどこぞの大学教授とは大違いである。

 

全22作品の中には、自分が間近で見た作品も取り上げられていてとても懐かしかった。ボッティチェリの「スタジオ・デリ・オネスティの物語」とフランシスコ・デ・ゴヤの「我が子を食らうサトゥルヌス」、フランシス・ベーコンの「ベラスケス<教皇インノケンティウス十世像>による習作」がそれだ。

 

中でも印象に残ったのが大学旅行で行ったスペインのプラド美術館で見たゴヤの作品。見た瞬間に「はっ」としてしまって、その絵の前から離れられなくなってしまった。ボサボサ髪のおじいさん(おじさん?)が我が子を喰らっている。子の体は上半身の一部と下半身を残すのみで、噛み切られた部分からは血が溢れている。

 

それにしても、このおじいさんの異様さは何だろう?ルーベンスも同じテーマで描いていたけれど、絵としてはこちらの方が断線面白い。自分へのお土産に「我が子を食らうサトゥルヌス」のポストカードを買ってしまったくらい興奮した。一緒にいた友人は「そういうのが趣味なんだね」と呆れていたけれど、スペイン行っててよかったー!

 

ベーコンの「ベラスケス<教皇インノケンティウス十世像>による習作」は東京の近代美術館で見た。まずギョッとする。豪華な椅子に座っているはずの偉い教皇が、なぜか大きな口を開けて叫んでいる。上から描かれた黄色と黒の線は、光なのか雨なのかわからない。偉そうに見えない教皇の絵って存在するんだなと思っていたら、その種明かしも本書でされています。

 

見た瞬間に怖さを感じる絵もあるし、解説があって「怖っ・・・!」と思う作品もある。知らなかった絵で印象的だったのはジャック=ルイ・ダヴィッドの「マリー・アントワネット最後の肖像」とクノップフの「見捨てられた街」。ドガムンクゴッホの有名な絵の解説も面白かった。間近で見る機会があればいいなあ。

 

たくさんの人にも読まれた本だと思うけれど、特に美術に興味がある人、ヨーロッパに興味がある人、ビジネスの場で意外と出てくる芸術トークに苦戦している人には読んでほしい!移動中にさらっと読めます。

 

続編がたくさんあるので、読むのが楽しみ!!!