富山への旅2
(続き)
結局一睡もできないまま羽田空港に向かった。ターミナル駅から30分はかかるバスの中でも全く眠れなかった。
「こんなことなら早いうちに睡眠導入剤(2種類)飲んでおけばよかったな。もう一便遅い飛行機(11時着)にすればよかったな。そもそも富山なら新幹線で行けるのに、なんで飛行機なんて選んじゃったんだろう」。この旅を後悔する言葉が次から次へと出てくる。
後ろ向きなときに限って、予定はスムーズに進むものだ。8時出発なのに7時前に到着してしまった私は「おにぎり食べたい」と農耕民族的なことを考えて、第二ターミナルをウロウロしていた。そこにあったのが立ち食い寿司。
https://tabelog.com/tokyo/A1315/A131504/13160418/
「旅に行くんだし、ちょっと豪勢に!」と意味不明なことを考えて、おまかせにぎり(1080円)を頼んだ。味は普通なのだが、1週間前に銀座で中国に赴任する先輩と寿司を食べた後だけにどうしても比べてしまう。そもそもこれから行くのは寿司が美味しそうな富山だし。
やや閑散とした空港でぼんやりした後、飛行機に乗った。これで少しは眠れるかなと思ったが、機内誌「翼の王国」で吉田修一のエッセイを読んで、うとうとしていたら富山空港に到着していた。所要時間50分。近。
旅の目的がないと美術館に向かうタチなので、とりあえずバスで街の中心部に出てみた。目に入ってくる景色は私が思う日本の原風景、もといロードサイド。山内マリコもこんな風景をみて育ったのかなとひとりごちる。途中で富山城址公園や百貨店「大和」の店舗が見えたが、あまり興味をそそられなかった。路面電車を見たときは「富山にいるんだなあ」と思ったのだけれど。
バスには結構な人が乗っていたはずなのに、私が駅前で降りるときには魔法のようにみんないなくなっていた。
(つづく)
富山への旅1
「富山って観るところあるの?」
東京・森下の焼肉屋「静龍苑」で名物のタン塩にがっついていた私は会社の先輩にこう聞かれ、答えに窮した。
会社を休職してから約3ヶ月。
そろそろ本を読んだり(最近まで文字の意味を認識するのが難しかった)
動かなくてはいけないと考えた私は、一人で行ったことのない場所に行こうと決めた。
一人旅をしたことがないわけではない。
入社3年目の頃は海外に一人で行ったし、出張は旅に入らないだろうが結構頻繁にしていた。
でもこれが国内一人旅でうつ病を抱えていたら。難易度は増すのである。
カウンセラーは「行こうと思える精神状態になったのがすごい!」と背中を押してくれたが、不安なところもあった。
富山について何も知らないのだ。
ANAのマイルが切れそうだからという理由で選ばれた場所で(往復12000マイル)、
いったい自分は何をすれば良いのだろう。
宿は素敵だと噂のところだが、チェックインまでかなり時間がある。
それまでに何をしたら楽しいんだろう。
悶々と考えていたが、結局朝方まで寝付けなかった。
(つづく)