アラサーOLの備忘録

東京に暮らすアラサーOLです

くずし割烹 たけはな

 同期が退職した。超長時間労働とガチガチの年功序列、能力のない人材の出世などブラックな香りがする環境ではあるが、業界トップクラスの待遇の良さからか辞める人間はそう多くなかった。入社3年以内の離職率は新卒(大卒・院卒)で約3割らしいが、わたしの会社は常に1割程度。同期の多くとは会社の愚痴をこぼしつつ、定年まで仲良く働くのだろうと思っていた。

 

 ところがである。仲が良い同期は年明けにあっさり退職していた。希望に胸膨らませて入社した企業で、全く希望していない部署に配属された同士だった。大学と専攻、入社からのキャリアパスが自分とほぼ同じ彼が会社を辞めるなんて。配属された部署が同じメンバーで作られたグループLINEに「退職することになりました。お世話になりました」とメッセージが送られたのを見たとき、かなり動揺した。

 

 九段下から四谷に向かう道を歩きながら、悲しい、残念だといった感情がぽろぽろと出てくる。どうしてネガティブな感情ばかり溢れるのだろうと考えたけれど、会社を休んでいる自分が置いていかれたと感じたのかもしれない。

 

    ただ時間が経つにつれ、彼の人生なのだから自分がどうこう言っても仕方ないと思うようになった。不真面目そうで真面目な彼のことだ。会社や他人に焦点を合わせて人生を送るのは向いていない気がする。別に彼が退社してもご飯は食べに行けるし、と。

 

 だからというわけではないのだが、早速東京にいる他の同期も含めて3人で飲みに行った。ふぐが食べたいと言われたので良さそうな店を速攻で探す。休職すると良い店を探す嗅覚が上がる気がするのはどうしてだろう。暇なだけかもしれないし、誰かに必要とされるのが嬉しいからなのかもしれない。

くずし割烹 たけはな

食べログ くずし割烹 たけはな

 選んだのはくずし割烹 たけはな。最寄駅は曙橋か四谷三丁目で、荒木町の奥の方といえばわかりやすいのかもしれない。こんなところにフジテレビがあったなんて信じられないくらいの住宅地だ。華やかさのある荒木町とはちょっと違う雰囲気。

 

 店はカウンターとテーブル席が3つほど。雑然というかこじんまりというか、キラキラした感じはあまりない。前菜はなまこ。アサヒの熟撰を飲みつつ、虎ふぐの煮こごり、薄造り、唐揚げと次々に振舞われる。まさに虎ふぐのフルコースという感じ。薄造りを長嶋食いしていた同期に笑った。

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虎ふぐの頭から先まで丸々と使われていたせいか、鍋や雑炊は出汁がとってもおいしい。もちろん身や出汁を吸った豆腐、白菜もたまらない。魚なのに澄みきっている汁を飲むのは不思議な感じがした。鍋を食べてもまだまだいけそうだったので、雑炊のご飯は多めにしてもらう。ひれ酒と祝い酒(長野県のお酒。ご主人は長野県出身)を飲んだから、一人一合は飲んだことになる。退職する同期は食べ物はもちろん、ひれ酒がやけにお気に召したようだった。わたしも同じペースで飲んでいたら「全然飲めなかったのに、強くなったんだね」と驚かれた。わたしたちの他にお客さんはいなくて、お喋りが止まるとご主人とアルバイトの女の子の話がやけに響いた。それを聞きながらお酒を飲んだ。

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    この際だからと転職のこともたくさん聞いた。2年前に兄弟の就職もあり転職を考え始めていたこと、今回転職する会社とは異なる企業も最終面接まで行ったこと、エージェントに登録すると鬼電がかかってくるから転職サイトに載っていた求人に応募したこと。職場はゆったりした雰囲気で圧倒的なホワイト企業だが、給料は3分の2に減る。新卒で入った会社が嫌になったわけではないが、他社も魅力的だった、など。もう一人の同期も3年後までに転職を考えているらしく、終身雇用が遠くなったのを肌で感じる。わたしはどうしようか、と考えざるを得ない。

 

    くだらない話もたくさんした。先が見えない恋人といつまで付き合うべきか、すぐにレストランで食事をする出会い系アプリ(Dine)の進捗、ニューヨークに遊びに行くにはいくらかかるか、クラブでのドラッグの蔓延、昔に比べてちょっと膨らんだよね?(太った?の婉曲表現)。みんなお金は稼いでいるし、それなりに遊ぶけれど、本質的には変わらず真面目なままだった。だから仲の良い同期のままなのだろう。これから立場が変わってもいつでも安心して会える。

 

    ふぐコースは安くはなくて、お酒込みで1人1万2000円(!)だったけれど、また少し稼いでだら来れるよね。今度は上野か立石の安い居酒屋でも良いな。

 

ϵ( 'Θ' )϶←ふぐの絵文字が可愛い