裁判傍聴に行ってみた4
寺内被告の弁護士はでっぷりとしたおじさんだった。似顔絵を何度も書こうとしたが、顎肉が上手に描けずイケメンになってしまった。西田氏への質問は当然のことながら検察官のそれとは異なり、ピリピリとしたものになった。
弁護士「あなたは被害者が外に出た翌日ももう一度外出しようとしたことを知っているんですか」
西田氏「いや、だから」
弁護士「知っているか知らないかを聞いているんです!」
わたしが残したメモにも「弁護士と証人ヒートアップ」と書かれている。それくらいやりとりが激しくなって、こんな人たちが普段周りにいたらさぞ面倒だろうなあと感じるくらいだった。
被害者はどんな性格かと問われ「おとなしい、用心深い」と西田氏は答える。
弁護士「では用心深い被害者が『ちょっといいですか』と被害者が近所の人に聞くのは不自然じゃないですか」
西田氏「なぜでしょうか」
弁護士「被害者が本当に恐怖を感じていたら『助けてください』と叫んでいてもおかしくはない。身の危険を感じなかったからそういう声かけになったのでは」
西田氏「そうではないです。被告人のマインドコントロールは理にかなったことをやっている。行動による服従と心の服従は違いますが、行動による服従の方がずっと簡単です。用心深い性格だったからこそ、今の状況を知ろうとして『ちょっといいですか』という声かけになった」
弁護士「でも被害者は手紙を出していますよね。服従ではないのではないですか。被告人によるマインドコントロールが稚拙だったのでは」
西田氏「稚拙とは思いません。外に出ていても、部屋に戻っています」
今回の刑事裁判では、検察側がマインド・コントロールの影響を訴えて、被害者の行動が統制されていたということが争われた。という意味では、意味が深いかと思います。
— Kimiaki Nishida (@nishidak0705) 2018年11月7日
ここまでで約1時間。疲れを感じていると「もうないですか」と裁判長が確認する。次回は相互弁論ですが、書類提出により短時間で終わるらしい。「寺内さん、次回は12月21日(金)午前11:30から429号法廷です」と裁判長に説明された寺内被告は小さな声で「はい」と答えた。裁判長は聞こえなかったのか「寺内さん、わかりましたか」と再び尋ねる。「わかりました」。冷静な声だった。そこまで聞いて、傍聴人は退廷を促された。
裁判所を後にしながら、わたしが育った地域で起こった誘拐・監禁事件のことを思った。その事件では少女が10年弱監禁されていたにも関わらず、犯人への実刑判決は懲役14年だった。自由を奪われた小学生の10年と、刑務所の中の受刑者の14年。10年監禁していても14年すれば社会に出てこれるのだと、子どもの頃のわたしは驚き、怯えたものだ。それと似たようなことが再び起ころうとしている。
今年は死刑という刑罰に光が当たった年だったけれど、どれだけ他人の人生を台無しにしても、人を殺さない限りは死刑どころか無期懲役にもならないのだ。10年やそこらで出所できるのだ。そして刑務所で人格が矯正されるかはわからない。裁判傍聴自体は興味深いものだったが、考えることが多くてクタクタに疲れた。
印象に残ったこと
・傍聴は入廷したらすぐ始まる。説明などは特にない
・今回は1時間で終了。休憩なし(ただし長時間のものは別らしい)
・被害者の名前は出さないように言われる。Googleが被害者名を永遠に残すのはどうなんでしょう
・結構出入りが多く、ドアがバタンバタンとうるさかった